皮膚科医エッセイ 爪・水虫 随想

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医者嫌いの患者さん

竹田 公英 先生

石川県金沢市
金沢有松病院 皮膚科
竹田 公英 先生

私が皮膚科医になって3年目の頃、とてもユニークな水虫の患者さんが来ました。皮膚科医となり、患者さんを診ることがかなり楽しくなってきた時期で、今でもはっきり覚えています。年齢は50代くらいの大工さん。毎日朝から晩まで足袋をはき仕事一筋といった生粋(きっすい)の職人さん。性格もかなり頑固。先生、水虫が治ればノーベル賞もんやろ? などといいながら威勢良く、夏の暑い日の午後に私の外来に来ました。では足を診せてと、足袋を取った瞬間にもの凄い悪臭と鱗屑(りんせつ)が。隣にいたナースに換気扇を最大限にと目で指示し、足底と趾間の鱗屑(りんせつ)および爪を顕微鏡で観察。案の定、白癬菌を確認しました。問題は私の外来に来るまでにどのような治療をしてきたかでした。題名のごとく小さい頃から大の医者嫌いで、全て自分で治すという努力をする人でした。この水虫は20年以上前からあるらしく、種々の民間療法をしてきたとのこと。酢に始まり、中国の特効薬と言われているタイガーバーム、竹の炭、味噌、醤油、などなど今時このような治療を信じている人がいるのかとあきれるくらいでした。しかし、最も驚いた治療とは熱い砂浜を走るというなんとも原始的というかあきれるというか、よく言えばとても自然派の人でした。とにかく自分でなんとか治そうと、自然治癒力に期待しがんばった人であることは賞賛に値しました。あげくの果てには、大工さんなのでカンナ削りが上手らしく、自分の踵(かかと)を綺麗に削っていたとか。確かに踵(かかと)は比較的(ほんとに比較的)綺麗でした。西洋医学を疑う大工さんを根気よく説き伏せ、外用と内服処方で見事完治したことは言うまでもありません。このように、いまだに水虫は完治しないものだと思い込んでいる患者さんは地方に行けば行くほどかなり多くいます。外用や内服をしっかりすれば水虫や爪水虫は完治するということをもっともっと啓蒙活動してもらえれば皮膚科の診療はしやすくなると思います。

自分で治しても治らない時は、素直に皮膚科にいきましょう。でした。

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