皮膚科医エッセイ 爪・水虫 随想

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皮膚科の門を

宇宿 一成 先生

鹿児島県指宿市
宇宿(うすき)
ひふ科クリニック
宇宿 一成 先生

梅雨時期になるとやはり水虫の患者は激増する。内服薬もできて、受診者も増え、治療する人が増えたのだから水虫の患者数が減ってきているのではないか、とこの数年、春先には感じているのだが、六月の声を聞くと、そんな考えが誤っていることを思い知らされる。新しい患者さんに混じって、去年も治療した患者さんがまた来る。人の足や爪に感染した白癬菌を治療しても、おそらく生活環境に撒き散らされた菌の数というのは大差ないのではないだろうか。そう思いながらも、受診した患者さんは無論治療する。ピンセットやなまくらになったメスの刃で皮膚落屑を鏡検する。爪の場合はグラインダーで、変色した爪のできるだけ近位の爪甲下の増殖した角質を採取して鏡検する。白癬菌を確認したら、必要に応じて抗真菌剤を処方する。外用だけの場合もあれば内服させる場合もある。爪の変形の激しい患者さんでは丁寧に爪切りをしてあげる。くさび状に変色した爪甲はできるだけ削り取る。削ったあとの爪がぎざぎざして靴下が引っかかるという場合にはさらにグラインダーで研磨して滑らかにする。その上で内服抗真菌剤と外用剤を処方すると、ほとんどは治る。受診のたびに改善を確かめているうちにだんだんと受診しなくなってくるので、もういいのだなと思っていると、翌年、場合によっては数年後にまた受診する。

「こーゆーのって、治った、というのでしょうか」と尋ねる患者もいる。「いったん治癒したものの再感染なのか、治癒しきれないものの再燃なのかは分らないけれど、治ってからも、受診しましょう。抗真菌剤の外用を、数日に一度行っていると再感染しないという考え方もあるのですよ」と説明するが、症状が軽快したら通院しなくなるのが、普通であろう。

かくして、患者は繰り返し皮膚科の門をたたくのである。

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