"自称"水虫患者さんの自己判断に頼った市販の水虫薬での治療よりも、皮膚科専門医を受診して、診断をつけたほうが完治が早く、確実な治療が受けられます。そして、アンケート調査結果からも、費用や満足度についても病院を受診されたほうがメリットが大きいことがわかりました。例年、水虫では?と来院される患者さんは、GWが終わった時期から増えてきます。GWが終わって、水虫かな?と自覚された方は、早めに皮膚科専門医を受診されることをお勧めします。
楠 先生: 新しい水虫薬が薬局に並んでいますが、いずれも効果の高い薬剤です。各薬剤の構造式はそれぞれ違いますが、どれを使用しても効果に差はほとんどありません。本当に水虫の患者さんであれば、市販薬でもうまく治療できる可能性は高いと思います。ただ、水虫というのは実は診断が難しく、皮膚科に来院される"自称"水虫患者さんの3人に1人は、実は水虫ではなく他の皮膚疾患です(図1)。市販の水虫薬を買い求める患者さんは、水虫だ、と思い込んで疑わずにいると思いますが、病院を受診されている方ですら、3分の1が水虫ではないのだから、実はそのうちの半数の方は水虫ではないと推測しています。水虫ではない患者さんが、水虫薬を使用している可能性があるわけです。
楠 先生: なんの効果も無いだけであればまだしも、皮膚炎を悪化させてしまうこともあるわけですから、元も子もありません。悪化させてしまってから、ようやく皮膚科を訪れる方も少なくありません。水虫は、罹患部位に白癬菌が存在するかどうかが診断の決め手なのですが、実際に白癬菌が存在する場合でも、その病態は単純ではありません。白癬菌だけによる皮膚症状だけでなく、白癬菌+一般細菌感染、例えばブドウ球菌などが白癬菌と一緒に感染を起こしている場合、白癬菌+湿疹・皮膚炎が合併している場合、さらには、白癬菌+一般細菌+湿疹・皮膚炎が混在してこじれてしまっている場合があります(表)。市販の水虫薬を買い求めている患者さんのうち、果たして白癬菌の感染だけで病態が説明できる水虫患者さんが何人いるのか、皮膚科専門医としては心配してしまいます。
楠 先生: もちろんです。患者さんの症状によって治療は異なります。例えば、一般細菌感染を合併している場合には、すぐに抗真菌薬(水虫薬)を使用せず、まずは経口の抗生物質を5日〜1週間服用してもらいます。細菌感染の症状を改善するより先に、水虫薬を塗れば、火に油を注ぐようなもので、症状が悪化してしまいます。また、湿疹や皮膚炎を伴っている場合も同様に、白癬菌が顕微鏡検査で確認できても、すぐに水虫薬は使わないで、通常は外用ステロイド薬を使用します。まず湿疹・皮膚炎の症状を抑えてから、白癬菌を叩くために水虫薬を使うのです。すぐに水虫薬を使用すると、湿疹や皮膚炎が悪化してしまって、治療がますます困難になってしまいます。いくら水虫薬に効果があっても、患部の状態をきちんと診断できていなければ、治療の仕方や使い方を誤ってしまうわけですから、なんの効果もないばかりか症状が悪化してしまうのです。
楠 先生: 難しいと思います。水虫と自己判断して市販の水虫薬を使用される方も多いかと思いますが、やはり、きちんと診断をつけて、適切な治療を選択できるのは皮膚科専門医だけです。